2013年2月28日木曜日

やさしさのパッチワーク 水野スウ



やさしさのパッチワーク
水野スウ 著
立風書房
1979年11月初版

::: 私物 :::










「毎日の何げない生活の中から、ちょっとすてきな話の端ぎれを拾い集めたら、とても楽しいパッチワークができました。ほんの少しだけやさしい気分になって回りを見れば、こんなにも世界が違ってくるのです。」(帯文より抜粋)

本書は、雑誌や新聞に連載されていたエッセイの中から53篇を選んで加筆修正し、まとめた一冊。
思いがけず、でもさりげなく、人に親切にしてもらったとき、じんと胸が熱くなるものです。
誰かのやさしいあたたかいこころを垣間見たとき、思いやりのある言葉にふれたとき、など、著者が毎日の暮らしの中で感じ受け取った気持ちを大切にノートに書き留めたような、そんなやさしい本です。

著者の水野スウさんは、娘さんがまだ赤ちゃんだった頃から、ご自宅を開放して「紅茶の時間」をはじめました。
はじめは、お母さんたちと赤ちゃんたちのふれあいの場だった「紅茶の時間」。
その後、いのちのこと、原発のこと、地球のこと、暮らしについてのことなど、みんなで語り合い行動していきます。

紅茶の時間
http://www12.ocn.ne.jp/~mimia/sue.htm

私は、数年前「紅茶の時間」にはじめて参加しました。そこで、言葉のワークショップや大人のための絵本の読み聞かせを体験したり、持ち寄りのごはんやおやつをいただいたり。
スウさんが淹れてくれた温かい紅茶も楽しみました。

スウさんと出会ったのは、もう何年も前のことになりますが、「てのひらごよみ」という本を読んだことがきっかけでした。
この本は、雑誌「いつかどこかで」の中の「スウの歳時記」を単行本化したもので、いま現在入手困難本ですが、機会がありましたらぜひ手にとってみてください。
装幀も内容もとてもかわいい暮らしの歳時記です。


2013年2月21日木曜日

亜土のおしゃれ料理 水森亜土



亜土のおしゃれ料理
水森亜土 著
潮文社
昭和53年11月初版

::: 私物 :::











◇ カバー絵・挿絵 / 水森亜土 ◇

「うちの家風は、どうもくいしん坊にできてまして、ダンナの書く芝居も、必ず食べものが出てきます。食べることへの情熱、即、お料理の道! みなちゃま、がんばってー。」 (あとがきより抜粋)

昭和50年代に出版された水森亜土さんと石井好子さんのコラボレシピ本シリーズ。
これは昨年、文庫本で復刊されました。
今回ご紹介するのは、やはりこちらも昭和50年代に潮文社から出版されていた単行本「亜土のおしゃれ料理」です。
料理写真は無く、亜土ちゃんのモノクロのイラストと文章のみのお料理本ですが、それも身近にある材料でパパっとできるものが大半で、どれもこれもおいしそうなのです。

年中行事を大切にしている亜土ちゃんの四季折々の料理や、家庭にある材料で手軽に作れるおかずやごはんなど、毎日の献立に役立つこと間違いなしのおすすめの一冊。

いくつか挙げてみますと・・・
これからいちばん近い年中行事といえば、雛まつり。亜土ちゃんのお雛様は、戦時中に疎開させてあったので焼けなかったのだそうです。
このお雛様を前に、椎茸・人参・れんこん・錦糸玉子がたっぷり入ったちらしずし、亜土ちゃんの大好物だという貝類のおさしみやはまぐりのおすまし、菜の花のおしたし、生ゆばのお煮しめ、などなど純日本風のコース料理が並べられます。

それと、必ずやらなくてはいけないと亜土ちゃん家の家訓になっているという、九月の十五夜と十月の十三夜。
上新粉と白玉粉とお水でこねて作るお月さまへお供えするおだんご(上新粉と白玉粉の配合にこだわりがある)、枝豆・きぬかつぎ・さつま芋・栗などたくさんの茹でもの、それに柿・ぶどう・梨・リンゴといった秋の果物とすすきをお供えします。
これだけの準備でもすごいと思うのに、亜土ちゃんのお料理熱はまだまだ続きます。栗おこわを炊き、ぎんなんや野菜たっぷりの自家製がんも、れんこんのきんぴら、焼き魚、などなど、読んでいるだけでぐぐ~っとおなかが鳴りそうなおいしそうな献立がずらり。
この本を読むたび、季節ごとの歳時、年中行事を大切にしていきたい、と思います。






















見返しには、未来劇場の女優さんでもある亜土ちゃんが、劇中に歌うという「スープの歌」の楽譜があったりと、亜土ちゃんファンにはたまらないどこまでもかわいいお料理本です。

寒い冬の夜、雪の降る夜、みぞれの降る夜、冬のわびしい雨の降る夜
本もあきたし、テレビもきょうはみたいものもない、編みものもする気になンない。そんな夜、スープでも作ってみませんか。 (「一人ぼっちの冬の夜長」より抜粋)

夜の時間だけを使い、ストーブで三日がかり煮込む野菜スープ。これに、パンの匂いがプンプンする焼き立てのフランスパンをちぎりちぎりいただくのだそう。
いまの寒い季節にぴったりのメニューです。

かわいいだけじゃない、楽しくて実用的な「亜土のおしゃれ料理」です。

2013年2月19日火曜日

言葉のぷれぜんと 岡部伊都子

 

言葉のぷれぜんと
岡部伊都子 著
昭和33年5月初版
創元社

::: 私物 :::









 ◇ 装幀 / 松岡寛一(洋画家) ◇

いちごがぽつんぽつんと並べられた愛らしい小さな本。
いまから50年以上も前の本なので、カバーもところどころ擦り切れていますが、大切にしている本です。いちごの装幀と「言葉のぷれぜんと」というタイトルに惹かれて購入したもので、これをきっかけに岡部伊都子さんの著作を少しずつ読むようになりました。

本書は、著者が昭和29年より4年間つとめたABC朝日放送、朝のラジオ番組「四百字の言葉」の原稿を一冊にまとめたものです。
日々の暮らしの中で気づくささやかなしあわせ、人と人とのかかわり、心の持ちようなど、一日に一枚、原稿用紙一枚におさめられた「四百字の言葉」。
帯には、「毎日の生活を明るく楽しくする 四百字の言葉」とあります。
ページのどこを開いても、優しく慈愛に満ちた美しい言葉で心をぽっと温かくしてくれる本です。

私はラジオが大好きで、家にいるときはずっとラジオをつけています。この本を手にとるたびに、昭和30年代に軽快なハモンドのリズムにのせて毎朝放送されていたこの「四百字の言葉」がどんな番組だったのだろうかと想像しています。

この番組は、第一集「おむすびの味」、第二集「続・おむすびの味」、第三集「蠟涙」、第四集「言葉のぷれぜんと」と、4年分4冊にまとめられています。
いずれの新書も、第四集の「言葉のぷれぜんと」以外は比較的入手しやすい本で、その後出版された単行本「抄本 おむすびの味」もあります。


2013年2月17日日曜日

暮しを紡ぐ / すてきな一日の時間割 / クニエダヤスエ



暮しを紡ぐ
クニエダヤスエ 著
じゃこめてぃ出版
1984年1月初版

::: 私物 :::











色とりどりのきれいな糸が並んだ美しい装幀です。
この素敵な装幀は、70~80年代のメンズ雑誌ポパイや絵本アイビーボーイ図鑑などでも知られるイラストレーターの穂積和夫氏によるもの。

クニエダヤスエさんは、たくさんの暮らしのエッセイを出版されていますが、本書では、帽子デザイナーやテーブルコーディネーターとしての仕事のこと、カメラマンのご主人と息子さんとの生活のことなど、プライベートでのお話がメインです。
5冊目に出版された本「暮しのおしゃれをあなたに」の前文の「暮しが好きなんです。ちょっとおかしく聞こえると思いますが、ずばり暮すことが面白くて、大好きなのです。」という書き出し。
クニエダさんの自分らしい充実した暮らしぶりは、戦前~戦後を過ごした少女時代からのお父さま(小説家・邦枝完二氏)やお母さま、お姉さま(女優)からの影響が大きかったようです。
お母さまとよく一緒に作ったというアップルパイ。粉と冷えたバター一片と玉子の黄身をまぜて、何層も何層もこねては伸ばして重ねて作るアップルパイの描写は、読んでいるだけでやわらかく煮えたりんごの良い香りが漂ってくるようです。


 
すてきな一日の時間割
クニエダヤスエ 著
じゃこめてぃ出版
1983年2月初版

::: 私物 :::











もうずいぶん前にタイトルに惹かれてはじめて購入したクニエダヤスエさんの本です。
これは、紛失してしまったのをまた買い直したもの。表紙のカフェオレボウルを真似して、当時、似たようなカップを見つけてきてお茶の時間を楽しんでいました。

「朝って、すてきじゃありませんか。」
朝起きてすぐのシャワータイム、そして新聞をとって、コーヒーのためのお湯を沸かす。朝の静かな台所にひろがる一杯のコーヒーの香り。こんな風にはじまるクニエダヤスエさんの一日。そのコーヒーを飲みながら、一日のスケジュールをチェックすることが大切で、これをするかしないかで一日の動きに大きくひらきが出るのだそう。それに、仕事のミスも無くなり、時間の無駄も無くなるのだとか。
「おしゃれな夜食ノート」という本にたくさんのレシピが載っていますが、この「すてきな一日の時間割」にも朝食やランチ、お菓子などのレシピが紹介されています。
写真は一枚も無いイラスト(大橋 歩)と文章だけなのに、どれも本当においしそうなのです。
煎りごま入りの簡単にできるクッキーは私も何度も作りました。
また、ベッドリネンなど季節に合わせたベッドメーキングのこと、食器類の手入れと収納、掃除や洗濯、お客さまのもてなし方、お祝いごとの贈りものなど、毎日の暮らしに参考になるお話も楽しめる本です。

いずれの本も絶版ですが、「おしゃれな夜食ノート」以外は、入手しやすい古本です。


2013年2月15日金曜日

私のコーヒー・スケッチ 文藝春秋編



私のコーヒー・スケッチ
文藝春秋 編
昭和59年9月初版

::: 私物 :::












毎朝飲むコーヒー、仕事の合間の休憩時間に飲むコーヒー、外出したときちょっと立ち寄るカフェや喫茶店。みなさんのいつものお気に入りのコーヒータイムはどんな感じでしょうか?

この本は、全日本コーヒー協会が主催の「私のコーヒー・スケッチ」と題したコンテストのエッセイ部門に全国から応募された約一万通もの作品の中から、“コーヒーと人々との触れ合い”をテーマに50篇を選んでまとめられたものです。

いちばん最初に掲載されているエッセイ「芝生で飲むコーヒー」から。

このところ、私たち夫婦は、お天気さえよければ皇居前広場へサイクリングに出かけます。そこで、初冬の午後の陽を浴びながら、持参したコーヒーを飲むのが、日課となりました。どこでも売っているインスタントのコーヒーなのですが、夫は「同じコーヒーなのに、どうしてこんなに旨いんだろう」とその度にいうのです。「それは、青い空がうつっているからじゃない」と、ちょっときどって答える私も、家で飲む味より、ずっとおいしく感じます。

これは、ある定年を迎えた夫婦の素敵なコーヒーのお話です。
50篇もの作品を読んでみて、人それぞれにコーヒーとのかかわりがあり、いろんな物語があるものなのだとしみじみと読み入りました。

この中に出てくる私が気になるコーヒー。それは、戦前にあったというセロファンにくるまれた箱に入ったコーヒー粉入りの角砂糖。イメージでは、ブランデーをしみこませた角砂糖(少し前まで「カフェロワイヤル・ブランデーシュガー」というものがあったのですが、販売終了となってしまったようです)のような感じかなと想像しています。
それで、その戦前の「コーヒー粉入りの角砂糖」をカップに2個入れ、長火鉢で音をたてて沸いている熱いお湯をそそぐ。それは、薄い茶色のお湯のようなものになるらしいのですが、どんな味わいなのか。薄そうな気がしますが、飲んでみたかった。

「私のコーヒー・スケッチ」。コーヒー党の方におすすめの一冊です。
比較的入手しやすい古本ですので、機会がありましたらぜひ。


2013年2月14日木曜日

家事整理のヒント / 掃除上手のヒント / 婦人之友ハンドブック



家事整理のヒント 婦人之友ハンドブック
婦人之友編集部 / 町田貞子 著
婦人之友社
1970年3月初版

::: 私物 :::

掃除上手のヒント 婦人之友ハンドブック
婦人之友編集部 / 小笠原衣子 著
婦人之友社
1970年3月初版

::: 私物 :::









表紙がとてもかわいい婦人之友社の70年代の家事本。レイアウトのセンスが良いです。
本と言っても、薄くて冊子のような感じで、コロンと真四角な形なのが特徴の「婦人之友ハンドブック」シリーズです。
他にも、暮らしまわりをテーマにした、料理・お菓子づくり・洋裁・家庭園芸などがあり、コレクターの方も多い人気シリーズで、とくに今回ご紹介する「家事整理のヒント」「掃除上手のヒント」の2冊は入手困難本です。






















「家事整理のヒント」は、家事評論家・町田貞子さんの長年の経験を生かした暮らし方をお手本に、気持ち良く毎日を過ごすための工夫が集められた本。























「掃除上手のヒント」は、毎朝の掃除、丁寧に時間をかけて掃除をするときなどのタイムスケジュールが、イラストとともにわかりやすく解説されています。
網戸についた埃は乾いたタワシでこする方法がいちばんだとか、網戸は水洗いするものと思い込んでいた自分には目からウロコ的な掃除法でした。

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「家事整理のヒント」の方の婦人之友編集部によるまえがきに、「それぞれその人らしい暮し方があります。」という一文があります。
みなそれぞれ本当はこうしたいと思う理想の暮し方があるかと思いますが、私なども、あわただしく過ぎていく忙しい毎日の中で、それがなかなか実現できないもどかしさを日々感じています。
そんなとき、こうした本を読んでいると、なんだか不思議に背筋がぴりっとしてきます。どんなに忙しく疲れたときでも、家に帰ってきたら身も心もほっと落ち着ける環境づくりができるように、少しずつがんばっていこうという気になってくるものです。


2013年2月13日水曜日

上手なせんたく 堀 志津



上手なせんたく
堀 志津 著
婦人之友社
昭和40年7月初版

::: 私物 :::

一冊目にご紹介する古本は、洗濯の本です。
いまからかれこれ40年以上も前の本。
さらにこれより7年前には、「たのしい洗濯」という本も出版されていたのでした。

抜けるような青空の下、洗濯物がハタハタとたなびくように見える、このすがすがしくさわやかな装幀を一目で気に入りました。 タイトルの手書き風のフォントもいい感じです。






中の写真はすべてモノクロですが、それぞれの布地に適した各種洗濯法が詳しく解説されています。












お出掛け用のワンピースなどは、大きなたらいの、たっぷり入れた水の中で、丁寧に洗っていきます。







外出着・日傘・下着・布おむつ・カーテン・ぬいぐるみ。
ひとつひとつのものを、大切に手入れをしている様子が、読んでいてとても気持ちの良い一冊です。

ひと塗りすれば容易にシミ抜きできるものや、ほんの少量で洗えるコンパクト洗剤など、現代では便利で安価な洗剤が豊富に売られています。この本を読んでいると、当時の女性たちの家事の苦労がしのばれます。みなこの本のようにこうして工夫して衣類管理をしていたのでしょう。実家の祖母の洋ダンスにベンジンがあったのを思い出しました。

それでも、冬物のコートの簡易クリーニングの方法や、アパートなど洗濯物を干すスペースが狭い住まいでの効果的な干し方など、いまでも参考になる内容がたくさんおさめられています。









次回も婦人之友社発行の本をご紹介します。